
ブランド体験が導くブランド育成と成果につなげる設計-イベントスペースにおける考え方と事例
この記事の要約
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ブランド体験(Brand Experience:BX)は、広告やスペック訴求だけでは価値が伝わりにくい現代のマーケティングにおいて欠かせない考え方です。一方で現場では、「ブランド体験が大事」と言われても、ロゴや世界観づくりにとどまり、何をどう実行すればいいのか分からないという声も少なくありません。
特に、検討期間の長い高単価の商品・サービスでは、広告だけで価値を伝えきるのが難しく、顧客の納得が追いつかないという課題が起こりがちです。
本記事では、ブランド体験が必要とされる背景や押さえておきたい考え方、イベントスペースを活用したブランド体験の考え方を解説します。『イベマチ』の事例も併せて紹介します。高単価の商品・サービスを扱うマーケティング担当者の方は、ぜひご一読ください。
目次[非表示]
ブランド体験とは
ブランド体験とは、購入前の広告やWebサイト、問い合わせ対応、接客、購入後のフォローまで、多岐の接点を通じて「このブランドらしい印象」が積み重なることです。*1
こうした体験がちぐはぐだと不安につながり、逆に一貫していると信頼が育ちやすくなります。
例えば、Webでは丁寧で上質な印象だったのに、問い合わせ対応が事務的だったり、店舗での説明がわかりにくい場合など、「本当に大丈夫かな」と感じさせてしまいます。一方で、どの接点でも説明が分かりやすく、相談しやすく、購入後も安心できる流れがそろっていれば、顧客は納得しながら検討を進められます。
なお、ブランド体験を施策として実際に取り入れる方法に、体験型マーケティングがあります。体験型マーケティングの効果については、こちらの記事もご覧ください。
参考
*1 ScienceDirect『A review and future directions of brand experience research』
ブランド体験が求められている理由
情報や選択肢があふれる現代では、機能や価格だけで競合他社との違いを伝えるのが難しく、説明を読んでも「結局どれが自分に合うのか判断できない」状態が増えています。これは、消費者が商品やサービスを選ぶ際に、機能・価格などの条件だけでなく、利用シーンや印象、ブランドへの信頼感なども含めて判断するようになっているためです。
高単価の商品・サービスでは、購入時に失敗したくないという心理が強く、比較・相談・検討を重ねながら納得して選びたい傾向があります。そのため、体験を通じて「実際に使ったらどうなるのか」「自分の状況に合っているか」を具体的にイメージできることが、納得感を高め、意思決定を後押しします。
また、よい体験・悪い体験は記憶に残りやすく、口コミや評価として接点を越えて共有されやすいため、ブランド体験は購入前だけでなく購入後のブランド評価にも影響する重要なテーマです。
ブランド体験におけるロゴとUX・CXの役割
ブランド体験を形づくる要素の一つとして、ロゴやUX *2、CX *3があります。
ブランドロゴは、顧客にブランドを覚えてもらうための“目印”として機能します。ただし高単価の商品・サービスでは、ロゴの印象だけで意思決定が決まることは多くありません。
これは、購入後の影響が大きい商品・サービスほど、顧客が内容を十分に理解し、安心して選びたいと考えるためです。そのため、情報の分かりやすさや相談のしやすさ、利用前後の対応といったUXやCXの積み重ねが、理解や納得を支え、意思決定に影響します。
例えば、次のような体験を通じて、顧客は情報を整理し、不安を少しずつ減らします。
サイトや資料の分かりやすさ
生活雑貨ブランド無印良品では、シンプルで分かりやすい商品情報にすることで、比較による疲れを感じにくいUX設計が見られます。問い合わせや相談のしやすさ
IT企業Appleでは、店舗での説明や購入後のサポートを含めた一貫した対応により、「買ったあとも相談できる」という安心感を提供しています。手続きのスムーズさ
ECサイトAmazonでは、購入手順を「1-Click購入」で簡略化することで、ユーザーが迷わず行動できるUXを実現しています。利用後のフォロー
家具・インテリアブランドIKEAでは、組み立てサポートや返品保証を通じて、購入後も安心して利用できるフォロー体制を整えています。
「分かりやすい」「自分に合っていそう」と感じられる場面が増えるほど、ブランドへの信頼も育っていきます。
こうした体験をバラバラにせず、購入前から利用中、その後の関係まで一つの流れとしてつなげていくことで、「このブランドなら安心できる」という印象が残ります。その結果として、目印であったロゴも、積み重ねた体験を思い出させる存在として、意味を持つようになります。
*2 UX(User Experience:ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーが製品やサービスを利用する際に得る体験のこと。
*3 CX(Customer Experience:カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客が商品・サービスに興味を持った瞬間から購入後までの接点(タッチポイント)を通じて得られる総合的な体験や印象のこと。
ブランド体験を考えるうえで押さえたい3つの視点
ブランド体験を考える際に重要なのは、顧客が「判断できる状態」へどのように近づけるかを意図的につくることです。購買判断は、商品・サービスの内容を理解し、不安が解消されたときに「選ぶ」という行動に移りやすくなります。そのため、判断材料や安心感が不足していると、意思決定が先送りされやすくなります。押さえておきたい視点は次の3つです。
①顧客の判断材料を定める
まずは、顧客が何を基準に選ぼうとしているのかを押さえます。情報を広く伝えるよりも、「決め手になりやすいポイント」を絞ったほうが、判断しやすくなります。
例えば住宅メーカーであれば、断熱性能の数値を並べるよりも、「冬の朝でも寒さを感じにくく、起床時の心理的負担が軽くなる」といった生活の変化として伝えるほうが、顧客は自分の暮らしに置き換えてイメージできます。
②顧客の不安を解消する
次に、顧客が抱えている不安や迷いを整理し、説明や体験を通じて一つずつ向き合います。
例えば、費用や維持コストへの不安はシミュレーションとして体験に組み込み、自分に合うかどうかの不安は簡単な診断を提示することで、顧客は安心して検討を進めやすくなります。
③次の行動につながる材料を用意する
高単価の商品・サービスでは、その場で購入を促すよりも、帰宅後も検討を続けられる材料を渡すことが大切です。
例えば自動車メーカーの試乗イベントなら、走行性能や安全機能、維持費など、その場で体験・説明した内容をまとめた資料があると、家族と共有しながら検討を深められます。併せて次回の相談会や試乗予約を案内しておくと、次の接点にもつなげやすくなります。
このように、体験の先に無理のない“次の一歩”を置いておくことで、顧客は検討を深めながら、納得感を持って意思決定へ進みやすくなります。
イベントスペースを使ったブランド体験の考え方
高単価の商品・サービスのイベントは、商品を見せるだけの場ではなく、顧客の関心が深まっていく流れをつくる場になります。
購買判断は「認知・興味」「理解・比較」「検討・不安解消」といった段階を経て進みます。ここからは、各フェーズに分けてイベントスペースの考え方を見ていきます。
認知・興味フェーズ|展示ではなく“入口”をつくる
まず意識したいのは、イベントスペースに足を止めてもらうことです。遠くから見たときに「自分に関係がありそう」「ちょっと覗いてみたい」と感じてもらえなければ、体験は始まりません。
このフェーズでは、入口から出口までの動線をきれいに整える前に、そもそも来店してもらうきっかけを用意することが大切です。
例えば、遠目でもブランドの世界観が伝わるビジュアルや空間づくりができていれば、それだけで人は集まりやすくなります。
また、サンプリングやノベルティ配布など、立ち寄るハードルを下げる仕掛けを目的に応じて組み合わせます。加えて、ポスターの内容や置き方、スタッフの姿勢や表情、声かけなども重要です。「この場で何が分かるのか」「どんな悩みが軽くなるのか」が伝わると、興味を持った人が自然に次のゾーンへ進みやすくなります。
理解・比較フェーズ|見せるより理解を助ける工夫を入れる
興味を持った顧客に対しては、見た目の派手さで押すよりも「何がどう違うのか」が分かる体験を用意することが大切です。
目的が不明確な演出は逆効果になりやすい一方で、富裕層向けでは“憧れ”や“手に入れたあとの気分”を想像させる世界観が、比較や検討の後押しになることもあります。
高単価の商品・サービスでは、スペックや価格を並べるだけでは理解が追いつきません。そこで、比較表や図解、ケース紹介、簡易シミュレーションなどを使いながら、「選択肢によって何がどう変わるのか」「自分の場合はどうなるのか」を具体的にイメージできる形にしておくと、検討が進みやすくなります。
このフェーズで目指したいのは説得ではなく、顧客が自分の基準で選べるように手助けすることです。
検討・不安解消フェーズ|会話が生まれる前提で整える
顧客が商品やサービスの特徴を理解し、選択肢の違いが見えてくるほど、「本当に自分に合うのか」「買ったあとに困らないか」といった不安や迷いも出てきます。
このフェーズでは、展示を見てもらうだけで終わらせず、会話が生まれる前提で場を整えておくことが大切です。
スタッフは販売を前面に出すのではなく、顧客の理解を支える立場で関わります。よく出る質問や迷いやすいポイントをあらかじめ押さえておき、それに沿って説明できるようにしておくと、顧客は「ここなら相談できる」「聞けば解決できる」と感じやすくなります。
その結果、無理にクロージングしなくても、次の相談や検討ステップへ自然につながります。
『イベマチ』によるブランド体験の事例
『イベマチ』では、三越伊勢丹グループでの1週間程度のイベントを中心に、上質な顧客との接点を創出し、ブランディング・認知拡大に加えて、理解・納得を通じた検討を前進させるイベントをサポートします。
体験会・相談会・会員獲得・ショールーミングなど従来の百貨店ではあまりなかった物販以外のさまざまなプロモーションが可能で、多くの企業さまにご利用いただいています。
事例①|株式会社ベネフィットジャパン

株式会社ベネフィットジャパンは、主にロボット関連事業を展開する企業です。自社サービスや製品をより多くの方に知ってもらうため、百貨店という信頼性の高い場でのリアルな顧客接点づくりを検討していました。そこで『イベマチ』を活用し、三越伊勢丹グループのイベントスペースにて、AIロボットを中心とした体験型イベントを開催しました。
開催前の課題
Webや広告だけでは、製品の特長や使い方を十分に伝えきれないと感じていた
実際に製品に触れながら説明できる、リアルな顧客接点を求めていた
百貨店など信頼性の高い場所での出店実績をつくりたいと考えていた
開催内容
イベマチを通じて、伊勢丹新宿本店・銀座三越・伊勢丹立川店などのイベントスペースに出店
AIロボットに実際に触れられる体験スペースを設置し、スタッフが対話形式で製品説明を実施
通行量や動線を意識したレイアウトで、来場者が気軽に立ち寄れる空間を設計
開催後の効果
百貨店来場者との新たな接点が生まれ、認知拡大につながった
実際の体験を通じて、製品の利用イメージを具体的に持ってもらうことができた
百貨店での開催実績が、今後の営業活動や商談時の信頼性向上にも寄与した
本事例では、百貨店のイベントスペースを活用することで、製品を「見る」だけでなく「触れて理解する」体験を提供しています。体験を通じて顧客の理解と納得を促し、ブランドへの信頼感を高める取り組みとなっています。
事例②|富裕層向けシニアレジデンス 株式会社プライムステージ

株式会社プライムステージは、介護付き有料老人ホーム『サクラビア成城』を運営している企業です。入居金が1億円を超える高価格帯の施設で、富裕層のなかでも特に資金力のある層を対象に集客施策を行っていました。
来店行動の変化により、施設見学会の開催や集客が難しくなるなか、イベマチを活用して日本橋三越本店でプロモーションを実施しました。
開催前の課題
行動変容の影響で施設見学会を実施しづらく、開催しても来場者数を伸ばしにくい状況
施設の特性上、見学後すぐに入居を決断するケースは少なく、長期検討が前提のため、判断材料を揃える接点づくりが必要だった
開催内容
三越日本橋本店で「富裕層」「シニア」向けにアプローチできる点に魅力を感じて実施を決定
お得意さまの動員タイミングに合わせて出店し、施設見学会の案内につなげる形で展開
外商顧客向けの案内への掲載や、個室の手配などのサポートを受けながら運営
開催後の効果
施設の案内パンフレットを約100部配布、さらには施設見学の予約も複数件獲得し、想定以上の成果になった
ブース近くの個室を利用できたことで、金額面を含めた説明を落ち着いた雰囲気で開催できた
今後に向けて、広告掲載や会員向け施策など追加施策の検討、紹介契約の締結につながった
本事例では、従来の施策では接点がつくりにくい状況が生じているなか、百貨店の顧客層との親和性に着目し、日本橋三越本店での出店を通じて富裕層・シニア層との接点をつくりました。見学後すぐの意思決定が起こりにくい商材であっても、検討のきっかけを増やす場として百貨店のリアル接点を活用している点が特徴です。
事例③|キリンビール株式会社
キリンビール株式会社は、会員制生ビールサービス『キリン ホームタップ』の認知拡大と会員獲得を目的に、百貨店のイベントスペースを活用したテストマーケティングを実施しました。『キリン ホームタップ』は自宅で工場つくりたてのビールを楽しめるサービスで、「ご夫婦やご家族で楽しむ顧客層と接点をつくりたい」という仮説をもって施策を検討していました。
開催前の課題
『キリン ホームタップ』のターゲットとなる顧客層との接点づくりが課題だった
既存の商談や広告施策だけでは、ターゲットユーザーの実像と親和性を確かめきれなかった
百貨店内での来場者プロフィールを活用したマーケティング検証の機会が必要だった
開催内容
三越伊勢丹新宿本店の催物場で行われる「メンズファッションバーゲン」内にブースを出展し、来場者に『キリン ホームタップ』の試飲やサービス紹介を実施
会場デザインには、百貨店の象徴であるブラックウォッチ柄を取り入れ、周囲に違和感なく溶け込む空間づくりを行った
イベント中、来場者に対するアンケートやフライヤー配布も行い、仮説検証に必要なデータを収集した
開催後の効果
2日間で300枚以上のアンケート回答を回収し、男性層を含む多くの来場者がターゲットユーザーと親和性が高いことが確認できた
『キリン ホームタップ』の導入意向やブランド理解の深さについての有益なデータが得られ、マーケティング仮説を実証できた
イベントでの成果を踏まえて、三越伊勢丹とのより深い連携に向けた商談を自信をもって進められる状況となった
本事例では、百貨店の高い集客力と来場者データを活用したリアル接点の創出が、仮説検証と次の施策につながる貴重な機会となっています。『キリン ホームタップ』のマーケティング戦略において、百貨店イベントは単なる接点以上の価値を生み出しました。
まとめ
この記事では、ブランド体験について以下の内容を解説しました。
ブランド体験とは
ブランド体験の必要性
ブランド体験におけるロゴとUX・CXの役割
ブランド体験を考えるうえで押さえたい3つの視点
イベントスペースを使ったブランド体験の考え方
『イベマチ』によるブランド体験の事例
ブランド体験は、ロゴや世界観づくりだけではなく、顧客がブランドに触れるあらゆる接点で積み重なる「このブランドらしい印象」のことです。特に高単価の商品・サービスでは、判断材料が不足したままだと検討が止まりやすいため、理解・不安解消・次の行動につながる材料までを含めて体験を設計することが重要になります。
イベントスペースは、単なる展示の場ではなく、認知から理解・比較、検討までを段階的につなぐ“体験の動線”をつくれる接点です。顧客の関心フェーズに合わせて空間やコミュニケーションを整えることで、より深い理解と納得を生み、次の商談や来店にもつながりやすくなります。
『イベマチ』では、百貨店のイベントスペースを活用し、富裕層・シニア層を中心とした上質な顧客接点の創出を支援しています。百貨店イベントの活用方法や、イベマチのサービス内容をまとめた事業概要資料をご用意しています。詳しく知りたい方はぜひご覧ください。











