
体験型マーケティングで成果を生む― 広告の次の一手となる体験設計
この記事の要約
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多くの企業がテレビCM、雑誌広告、Web広告など、これまで効果があるとされてきた施策を試しても、集客や成約につながらないと感じています。*1
広告は認知獲得には有効ですが、マーケティング理論では認知と検討・購入は別の段階であり、認知があっても購買に進まないことが知られています。*2
これは、「興味があるが、広告のような短時間の情報接触だけでは判断材料が不足している」という状態と言えます。*3
広告は、短時間で情報を届けることに優れています。一方で、理解や納得、比較といった判断プロセスまでを担う設計には向いていません。*4 結果として、認知は取れても次の行動につながらない状況が生まれています。
そこで今、認知の次のステップとして注目されているのが「売り込む」のではなく「理解してもらう」ために、顧客が判断できる場を設計する体験型マーケティングです。本記事では、広告施策が伸び悩む背景を整理しながら、体験型マーケティングの有効性を事例とともに解説します。
参考
*1 株式会社メディアリーチ MARKETIMES 「国内企業のデジタルマーケティング実態調査2023年/2024年」
*2 Branding Strategy Insider 「Brand Awareness vs. Purchase Funnel Awareness」
*3 Mecredy, P., Wright, M., Feetham, P. et al.「Remembering less, or needing less? Age-related differences in the purchase funnel」
*4 宇佐美和歌子、境新一「広告によるマーケティングと消費者心理に関する研究」(東京家政学院大学紀要 第46号、2006年)
目次[非表示]
- 1.なぜ広告施策だけでは成果につながりにくくなっているのか
- 2.体験型マーケティングとは何か
- 2.1.体験型マーケティングの主な特徴と評価すべきKPI
- 2.1.1.① 購入や契約は顧客自身の判断ができるように設計する
- 2.1.2.② 説明や対話を通じて理解を深める
- 2.1.3.③ 比較や検討を前提にした情報提供を行う
- 2.1.4.④ 顧客自身が判断できる状態をつくる
- 2.2.【事例①】海外サブスクリプションサービス|食事宅配サービス の体験イベント
- 2.3.【事例②】高級輸入車|没入型ブランド体験
- 2.4.【事例③】ベビーカーの試乗体験
- 2.5.イベント施策と体験型マーケティングは何が違うのか
- 3.体験型マーケティングの効果が出やすい理由
- 4.広告と体験型マーケティングの役割の違い
- 5.体験型マーケティングが向いているサービス・企業
- 5.1.体験型マーケティングが向いているサービス・企業の共通条件
- 5.1.1.① 購入・契約までに検討期間がある商材
- 5.1.2.② 判断軸が価格や機能だけでは決まらない商材
- 5.1.3.③ 広告だけでは判断材料が不足しやすい商材
- 5.1.4.④ 顧客の納得感を重視し長期的な事業の成長を期待したい企業
- 5.2.【事例④】富裕層向けシニアレジデンスの案内会を百貨店で実施|株式会社プライムステージ
- 5.3.体験マーケティングが「個人にとっての価値」になりやすい理由
- 6.体験型マーケティングを実践に落とすために考えること
- 7.まとめ
なぜ広告施策だけでは成果につながりにくくなっているのか
同じターゲットに似た広告が集中している
多くの広告施策では、狙うターゲットが似通っているため、同一ユーザーへの類似広告が増え、注意が分散します。これは一般に"広告クラッター(広告の過密状態)”と呼ばれ、結果としてクリック数などの指標が伸びにくくなります。
実際の広告研究でもこの効果の実態が示されています。*5
情報過多による広告への慣れ
現代のユーザーは、日常的に大量の情報に触れています。
総務省の調査報告書でも、情報接触量の増加が指摘されています。こうした環境では広告は無意識にスキップされやすくなっています。
特に、機能や価格を簡潔に伝える広告は、理解よりも認知で止まりやすい傾向があります。*6
深い検討が必要なサービスほど即断されにくい
高額品・長期利用のサービスほど判断は慎重です。比較や相談を前提に、時間をかけて検討されます。これは現代の消費者が 情報過多の中で最善の選択をしようとしているからとも言えます。
2024年のGoogleの調査では、日本人回答者の66%が「買い物の際に情報の多さに圧倒される」と答えており、選択肢が増えるほど比較・検討のコストが高まっている実態が示されています。*7
その結果、広告を見て資料請求までは進んでも、判断に必要な情報が整理されないまま検討が止まってしまうケースが生まれやすくなっています。これは、興味はあっても「自分にとって何が決め手になるのか」が見えない状態と言えます。
参考
*5 竹内亮介「広告視聴と広告回避に関する消費者選択」(慶應義塾大学大学院商学研究科2017年度学事振興資金成果論集『成長しない社会における企業・経済』pp.95-106)
*6 総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」
*7 Google「買い物で「失敗したくない」が「より良い商品も探したい」生活者たち:「“ あなた ” に意味ある情報」と AI の関係」
体験型マーケティングとは何か
体験型マーケティングとは、広告によって生まれた関心を、理解・納得・判断へとつなげるためのマーケティング手法です。決して、商品やサービスをその場で売ることを目的とした施策ではありません。*8
この考え方は、消費者行動研究や心理学の分野でも裏付けられています。
例えば、Holbrook & Hirschman(1982)は、消費者は製品の機能や価格といった情報だけでなく、体験を通じて得られる感情や意味を含めて価値判断を行うことを示しました。また Schmitt(1999)の「Experiential Marketing」では、体験は感覚・感情・思考・行動・関係性といった複数の次元で理解と評価を深め、態度形成や意思決定により強い影響を与えるとされています。*9
体験型マーケティングは、こうした広告で不足しやすい判断に必要な整理や納得を埋めるために設計されます。
参考
*8 Holbrook, M. B., & Hirschman, E. C. (1982).「The Experiential Aspects of Consumption: Consumer Fantasies, Feelings, and Fun」
*9 Schmitt, B. H. (1999).「Experiential Marketing」
具体的には、次のような特徴があります。
体験型マーケティングの主な特徴と評価すべきKPI
体験型マーケティングは、一般的な広告や販促施策とは異なり、その場での購入や契約を成果の前提にしません。
① 購入や契約は顧客自身の判断ができるように設計する
その場で無理に購入や契約を迫るのではなく、検討につながる質の高い接点を作ることを重視します。
KPI例
イベント後の資料請求数
後日の商談化率・来店率
体験参加者のうち、検討フェーズに進んだ割合
② 説明や対話を通じて理解を深める
体験の場では、顧客が自ら質問し、対話を通じて理解を深めます。これは一方向の説明では測りにくい価値ですが、行動として可視化できます。
KPI例
来場者一人あたりの質問数
スタッフとの対話時間
体験後アンケートにおける「理解度」「納得度」のスコア
③ 比較や検討を前提にした情報提供を行う
体験型マーケティングは、「今すぐ選ばせる」のではなく、比較・検討に必要な判断材料を整理して渡すことを目的とします。
KPI例
比較資料・ガイドブックの持ち帰り率
他社比較に関する質問の発生率
体験後に再接触(Web閲覧・問い合わせ)した割合
④ 顧客自身が判断できる状態をつくる
最終的なゴールは、企業が説得することではなく、顧客自身が「自分に合う/合わない」を判断できる状態になることです。
KPI例
「自分に合っているか判断できた」と回答した来場者割合
検討理由が明確になったと回答した割合
商談時の検討期間短縮、意思決定までのリードタイム
このように体験型マーケティングは、 「売る場」ではなく、情報を比較検討したうえで、そのサービスが自分の価値観に合うかどうかを判断するための場を設計する考え方です。
成果を即時の売上だけで測るのではなく、理解・納得・検討がどこまで前に進んだかをKPIとして捉えることが、体験型マーケティングを正しく評価するポイントになります。
以下では、この考え方が実際にどのような商材・場面で活用されているのか、具体的な事例を紹介します。
【事例①】海外サブスクリプションサービス|食事宅配サービス の体験イベント

目的
広告では伝えきれない「味・使い勝手・生活との相性」を体験を通じて理解してもらうこと。
商材の特徴
月額制のサブスクリプションサービス
継続利用が前提のため、初期の納得感が重要
味・使い勝手・ライフスタイルとの相性を事前に判断したい商材
実施内容
実際に宅配される食材を使った、調理体験イベントを開催しました。イベント構成は参加者自ら調理することで、食材の質や調理方法そして味を体験できます。
価格や割引条件を前面に出すのではなく、「このサービスが自分の生活に合うかどうか」を判断するための体験を提供する設計です。
イベントの効果
参加者はその場で登録を迫られることはありませんが、体験を通じてサービス内容への理解と納得が深まり、結果としてイベント参加者のサブスク登録率が向上しました。
【事例②】高級輸入車|没入型ブランド体験

目的
価格やスペックの比較ではなく、ブランドが大切にしている価値観や世界観を体験として伝え、「自分の価値観に合うブランドかどうか」を判断できる状態をつくること。
商材の特徴
価格ではなくブランドのイメージや価値観で選ばれる
信頼と納得が意思決定に直結
実施内容
単に車両を展示するだけでなく、高級ショッピングエリアでポップアップショーケースを展開し、プレミアムなホスピタリティを提供する空間を演出しました。イベントスぺースでは最新の電気自動車シリーズの技術を実際に体験でき、憧れのライフスタイルや環境をイメージしやすい機会を提供。この没入型のブランド体験を通じて、スペックや価格表を前面に出さず、デザイン思想や安全性への取り組み、ブランドとして何を大切にしているかを空間全体で表現しました。
イベントの結果
来場者は「このブランドが自分の価値観に合うか」を判断することができ、結果として、検討段階での納得感が高まり、後日の商談や購入時の意思決定がスムーズにつながります。ただ15分試乗するより多くのことを来場者に提供した事例です。
【事例③】ベビーカーの試乗体験

目的
スペックや説明だけでは判断しにくい安全性や乗り心地を、保護者自身の体験を通じて確かめてもらい、納得したうえで比較・検討できる状態をつくること。
商材の特徴
安全性や使い勝手が重視される
購入前に比較・確認したい要素が多い
実施内容
海外のベストセラーベビーカーの大人サイズのレプリカを作成し 、大人が実際に試乗できるようにしました。スペック説明ではなく、段差やカーブといった日常シーンを再現した環境で体験できる設計です。
イベントの結果
赤ちゃんは自分で乗り心地をフィードバックできないことに着目し、大人が実際の乗り心地を確かめるという取り組みは、参加者にとって忘れがたい経験と、実際の快適度を図る良い機会となりました。自身の体験により自身の子供にとって有益な商品かどうかも判断しやすくなり、納得した状態での購入検討につながった事例です。
イベント施策と体験型マーケティングは何が違うのか
ここまで紹介してきた事例はイベントという形式を取っているものが多いため「体験型マーケティング=イベント施策」と受け取られるかもしれません。しかし両者は、目指している成果や、施策の考え方そのものが異なります。
多くのイベント施策は、
集客数を増やす
話題をつくる
短期間で認知を広げる
といった点を主な目的としています。
一方で、体験型マーケティングの目的は、必ずしも話題化だけが目的ではなく、来場者一人ひとりが「自分に合うかどうか」を判断できる状態をつくることです。
この違いを整理すると、以下のようになります。
観点 | イベント施策 | 体験型マーケティング |
主な目的 | 集客・話題化・認知拡大 | 理解・納得を深め、検討に進める |
ゴール | 多くの人に知ってもらう | 自分に合うかどうか判断できる状態 |
重視する指標 | 来場者数、話題性、露出量 | 理解の深さ、納得感、検討意向 |
来場者との関係 | 一方向の情報提供が中心 | 双方向の対話・体験が前提 |
購入・契約 | その場での成果を期待する場合もある | その場での結論は前提としない |
設計の考え方 | 短期間でのインパクト重視 | 比較・検討を前提とした情報整理 |
このように、見た目や形式が似ていても、何をゴールにしているかがまったく異なります。
体験型マーケティングでは、
単純な集客数よりも理解の深さを重視する
その場での購入や契約を前提にしない
比較や検討に必要な判断材料を整理する
といった設計が求められます。
ここを混同してしまうと、体験の場が「説明不足のイベント」になってしまい、来場者は判断できないまま帰ってしまいます。
体験型マーケティングでは、来場者一人ひとりが納得し、検討に進めるように、理解を深めるための設計そのものが成果を左右するのです。
体験型マーケティングの効果が出やすい理由
理解・納得・信頼が同時に進む
体験型マーケティングの場では、企業とサービスのあいだに双方向のやり取りが生まれます。「他社との違いは?」「自分に合う?」といった質問が自然に出てくるのは、顧客が情報を受け身ではなく、自分ごととして処理している状態だからです。
加えて、心理学・マーケティング研究でも、能動的な関与(active engagement)が理解や態度形成を促すと指摘されています。*10
能動的に情報処理を行う場面では、消費者は単なる受動的な情報接触よりも深い評価・比較が行われ、結果として納得や信頼形成が進みやすいとされています。
慎重な意思決定プロセスと相性が良い
高額商材や専門性の高いサービスほど、顧客は広告を見るだけでなく「人に話を聞く」「試す」など、能動的に判断材料を集めて比較します。
意思決定に関する心理学理論では、消費者は能動的に情報を探索・評価するほど、納得感の高い(後悔しにくい)意思決定につながりやすいとされています。体験はそのプロセスを促し、判断材料の整理や判断基準の言語化を後押しします。*11
体験型マーケティングは記憶に残り、候補に残りやすい
実際の体験は、個人が経験した時間・場所・感情などの文脈と結びついた「エピソード記憶」として残りやすく、後から思い出されやすいという特徴が確認されています。*12 *13
そのため、見て触って体験して記憶に定着した内容は、後日の比較検討場面で想起されやすく、選択肢の中で「検討候補」として残りやすい状態になります。
広告と体験型マーケティングの役割の違い
広告と体験型マーケティングは、どちらも「マーケティング施策」ではありますが、担っている役割は大きく異なります。役割を整理せずに組み合わせると、成果が出にくくなります。
広告が担う役割|認知と関心をつくる
広告の強みは、短時間で多くの人に情報を届けられる点にあります。テレビCM、雑誌広告、Web広告などはいずれも、「存在を知ってもらう」「選択肢に入れてもらう」ための手段です。
一方で広告は、伝えられる情報量が限られています。価格や特徴、メリットは伝えられても、
なぜその選択が自分に合うのか
他とどう違うのか
不安点をどう解消すればいいのか
といった判断に必要な整理までは担いきれません。
広告はあくまで、検討プロセスの入口をつくる工程です。
体験型マーケティングが担う役割|判断を前に進める
海外の調査*14 によると、体験やイベントに参加した消費者の約85%が、その後の商品・サービス購入の可能性が高まったと回答しています。また約91%が、体験後にブランドに対してよりポジティブな印象を持ったと答えています。
この結果は、体験が広告で生まれた「名前を知っている」という状態を、理解や納得を伴う判断段階へ進めていることを示唆しています。
広告は商品・サービスの存在を知らせる力には優れていますが、「自分の場合どうか」「他と比べてどうか」「何を基準に判断すべきか」といった材料までは、十分に提供しきれないことがあります。
そこで体験型マーケティングは、広告で生まれた関心を受け止め、判断を前に進めるための工程として機能します。
参加者との対話や実際の体験を通じて、
自分の場合はどうか
どの選択肢が現実的か
何を基準に判断すべきか
を整理し、理解と納得を深めていきます。
重要なのは、必ずしもその場で結論を出させない点です。判断材料を揃え、持ち帰って検討できる状態をつくることこそが、体験型マーケティングの役割になります。
工程として考えるマーケティング設計
広告と体験型マーケティングは、対立する施策ではありません。広告で生まれた関心を、体験へと受け渡す設計があってこそ、成果につながります。
広告だけでは「知っている」で止まりやすく、体験だけでは接点が限られます。
認知 → 関心 → 理解 → 納得 → 検討
という流れの中で、広告は前半を、体験型マーケティングは後半を担います。
この工程分解ができると、「なぜ広告の成果が頭打ちになっているのか」「どこに次の一手を置くべきか」が明確になります。
体験型マーケティングが向いているサービス・企業
ここまで見てきた通り、体験型マーケティングは 顧客が「自分の価値観にあうかどうか」を判断するための工程として機能します。そのため、どんな商材・企業でも同じように成果が出るわけではありません。
まずは、体験型マーケティングと相性が良い商材・企業の条件を整理します。
体験型マーケティングが向いているサービス・企業の共通条件
① 購入・契約までに検討期間がある商材
その場で即決されにくい
比較や相談が前提になりやすい
具体例
注文住宅やリフォーム、高級不動産、高額な保険・資産設計サービス、長期契約を前提とした教育・留学プログラム。
② 判断軸が価格や機能だけでは決まらない商材
- 信頼感や価値観との一致、将来性が重視される
- 提供者の考え方や担当者との相性が重視されやすい
具体例
プライベートバンキングや資産管理サポート、担当者や施術者を指名して選ばれるサービス、コンシェルジュ型のライフスタイルサービス、オーダーメイド型サービス。
③ 広告だけでは判断材料が不足しやすい商材
広告で認知は取れているが、検討が進みにくい
「自分に合うかどうか」が事前に分かりにくい
具体例
会員制リゾート、ラグジュアリーなサブスクリプションサービス、定期利用を前提としたウェルネス関連サービス、体験価値が中心となるライフスタイルサービス。
④ 顧客の納得感を重視し長期的な事業の成長を期待したい企業
短期的な売り上げよりも、質の高い検討を重視
無理に商品を顧客に買わせることを避けたい
具体例
富裕層向け会員制クラブ、趣味・嗜好を軸にしたプライベートコミュニティ、長期的な伴走を前提とした資産・ライフサポートサービス、継続利用によって価値が深まる会員プログラム。
これらの条件に当てはまる場合、 体験型マーケティングは 広告の次の工程として有効に機能します。
ここからは、これらの条件に合致する商材・企業が 実際にどのような体験型施策を行っているのかを、 具体的な事例で紹介します。
参考
*10 Davey, A., Sung, B. & Butcher, L.「Experiential Marketing research, Revisiting experiential marketing: a Delphi study」
*11 Zhengyu Hu, Guojun Wu, et al.「Immersive XR That Moves People: 行動意図における体験の役割」
*12 「An historical perspective on Endel Tulving's episodic-semantic distinction」
*13 エピソード vs 意味記憶の研究
*14「EventTrack 2018」
【事例④】富裕層向けシニアレジデンスの案内会を百貨店で実施|株式会社プライムステージ

入居金1億円を超える介護付き有料老人ホーム(シニアレジデンス)の案内会を開催。施設の特性上、すぐに入居を決断するのが難しい商材となり、顧客との対話が重要です。
商材の特徴
富裕層向けの高額不動産レジデンス
即決されにくく、慎重な検討が前提
立地や価格だけでなく、信頼性や将来性が判断軸になる
実施内容
富裕層向けシニアレジデンスのプロモーションとして、百貨店内のイベントスペースを活用した案内会を実施しました。その場での販売や申込みは行わず、施設のコンセプト、開発背景、居住後のライフスタイル、将来の安心材料といった情報を丁寧に説明する設計です。
また、落ち着いたブース設計を提供したため、営業色の強い商談にはならず、顧客自身の状況に当てはめて検討しやすくなります。
実施の結果
「今すぐ入居を決める場」ではなく、「検討する価値があるかどうか」を判断する場として機能しました。結果として、パンフレット配布に加えて、施設見学の予約獲得ができました。
体験マーケティングが「個人にとっての価値」になりやすい理由
事例からも分かるように、体験型マーケティングで重視されているのは、商品やサービスそのものを理解してもらうことだけではありません。
より重要なのは、顧客自身が体験を通じて、「自分にとってどんな価値があるのか」を確認できることです。
特に富裕層向けのサービスでは、日常的に多くの提案や売り込みを受けているため、一般的なメリットや機能説明だけでは判断が難しい場面が多くあります。
説明や対話を通じて、「このサービスは、自分の考え方やライフスタイルに合うのか」「自分にとって、どんな意味を持つのか」を具体的に想像できる状態をつくります。
これが、体験型マーケティングが持つ大きな特長です。
体験型マーケティングを実践に落とすために考えること
ここまで、体験型マーケティングがなぜ有効なのかを、具体的な事例とともに見てきました。
共通していたのは、その場で売ることよりも、「購入の判断に必要な理解と納得をどうつくるか」を重視していた点です。
一方で、実務の現場では次のような疑問が浮かびます。
「考え方は理解できたが、実際に何から始めればいいのか」
「自社で再現するには、どんな設計が必要なのか」
ここからは、体験型マーケティングを実践するうえで、押さえておきたい考え方を整理します。
体験型マーケティングは目的を柔軟に設定する
体験型マーケティングを検討するとき、最初にやりがちなのが「どう売るか」から逆算しがちになることです。
しかし、これまでの事例が示す通り、成果が出ている施策ほど売上を前提にせず、顧客の判断を支える場として設計されています。
重要なのは、
来場者が何に迷っているのか
どこで判断が止まっているのか
どんな情報が整理されていないのか
を明らかにし、理解と納得を進めるための場を用意することです。
大きなイベントから始める必要はない
体験型マーケティングというと、大規模なイベントや派手な演出を想像させる人も多い事でしょう。
しかし実際には、相談会や説明会など、小さな接点から始まっているケースが多く見られます。
重要なのは規模ではなく、
質問しやすい空気があるか
比較や相談が前提になっているか
持ち帰って検討できる情報が整理されているか
といった設計です。
無理に集客数を追うのではなく、一人ひとりの理解を深めることが、結果として次の検討や成約につながります。
「どこで実施するか」も体験の一部になる
体験型マーケティングでは、 内容だけでなく「どこで行うか」も重要です。
安心して話を聞ける環境か。
「押し売りされる」場だと感じさせないか。
落ち着いて相談できる空気があるか。
こうした条件が揃ってはじめて、来場者は本音の質問をし、自分事として考えることができます。
まとめ
この記事では、体験型マーケティングについて以下の内容を解説しました。
なぜ広告施策だけでは成果につながりにくくなっているのか
体験型マーケティングとイベント施策の違いと効果が出やすい理由
広告と体験型マーケティングの役割の違い
体験型マーケティングが向いているサービス・企業・実践時のポイント
広告施策で認知は取れているのに、検討や意思決定が進まない。そんな状況では、広告を増やすのではなく「判断材料を揃える工程」を設計することが重要です。体験型マーケティングは、売り込みではなく理解・納得・信頼をつくり、顧客が“自分に合うかどうか”を判断できる状態へ進めるための手段として機能します。
成果につなげるポイントは、イベントの見た目ではなく目的と設計思想を分けて考えることです。集客数や話題化をゴールに置くのではなく、来場者一人ひとりの疑問が出て、整理され、持ち帰って検討できるようにする。さらに、富裕層向けの商材では「一般的なメリット」ではなく、本人にとってのパーソナルな価値を体験の中で確かめてもらう設計が効いてきます。
『イベマチ』では、三越伊勢丹グループ店舗をつなぎ、イベント出店をサポートするサービスとして、スペース提案から企画立案、開催までを一気通貫でサポートし、「売らないのに検討が進む」イベント設計を後押しします。
サービス説明や販売トークに偏らない、立ち寄りやすいイベント空間の設計
自然に質問が生まれる、相談・対話を中心にした運営設計
体験後に「次に何を検討すればよいか」がわかるイベント導線づくり
この記事で紹介したような「売らないのに購入したくなるイベント」を自社で実施できるか、具体的な条件や想定をもとに検討してみませんか。
イベマチでは、サービスや目的に合った百貨店・スペースの考え方、初回イベントで確認すべきポイントなどを前提に、企画段階からの相談をお受けしています。
体験マーケティングを試したいが、何から始めればよいか迷われている方は、ぜひお気軽にイベマチへお問い合わせください。









