
百貨店イベントスペースが顧客獲得に効く仕組み― 体験型プロモーションで成果につながった事例
この記事の要約
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百貨店イベントスペースを活用した体験型プロモーションでは、実際に顧客獲得につながった事例が生まれています。
実際に、百貨店イベントを活用した体験型プロモーションでは成果につながった事例も生まれています。その一つが、家庭用ビールサーバーのプロモーションです。この施策では、2日間のイベントで300件以上のアンケートを回収し、導入相談につながる接点を獲得しました。
では、こうした成果はどのような設計によって生まれているのでしょうか。
成果が出ている事例に共通しているのは、単に商品やサービスを見せるのではなく、来場者が体験し、対話を通じて疑問や不安を整理できる場になっていることです。百貨店という環境が持つ安心感や接点の質も加わることで、その場での理解が次の行動につながりやすくなります。
本記事では、 百貨店イベントスペースを活用して顧客獲得につながった3つの体験型プロモーション事例を取り上げ、成果につながったポイントを紹介します。また、百貨店がなぜ顧客獲得に結びつきやすいのか、その背景も解説します。
目次[非表示]
なぜ百貨店は「顧客獲得」につながりやすいのか
さまざまなチャネルで認知は広がっても、実際の顧客獲得につながるかどうかは別の話です。広告やSNSでは商品・サービスの存在を伝えられても、生活者が自分ごととして捉えられなければ、検討過程で判断が止まりやすくなります。
百貨店は、来場者の多くが自ら情報を取りに来ている場です。「百貨店の利用に関する調査」では、直近1年間の百貨店利用者の利用目的としては、「食品売り場の利用」や「贈答品の購入」など、目的来店が多いことが示されています。*1
これは、「なんとなく情報を見る」状態よりも、自ら行動して情報接触をしている層と出会いやすいことを示しています。また、百貨店来場者はブランド認知や体験への関心が高い傾向もあります。
主要百貨店のアプリ利用データなどを用いた分析では、高所得層やライフスタイルへの高い関心傾向がある層が多くを占めているのが特徴です 。*2
こうした来場者は、価格ではなく、品質・接客・体験まで含めた価値判断をしているため、 体験型の接点が評価されやすいといえます。
さらに、百貨店では 広告だけでは伝えきれない情報が体験や対話で補われる点が重要です。商品・サービスを実際に手に取ったり、スタッフと会話したりする機会は、スペックや価格だけではつかめない価値を来場者に感じてもらえます。
実店舗での検討行動は、「自分の生活や価値観に合うか」を具体的にイメージできるように促します。百貨店という特有の空間は、来場者が自分の価値基準で判断材料を積み上げられる環境です。
こうした点が重なり合うことで、広告で認知した層を「次の検討段階」へ進めやすい接点として機能し、 顧客獲得につながる確率が高まります。
参考データ・出典
*1 マイボイスコム株式会社『百貨店の利用に関する調査』
*2 マナミナ『百貨店利用者のペルソナは?アプリデータ×アンケートで分析』
顧客獲得につながった3つの体験型プロモーション事例
百貨店イベントスペースの効果は、理論や構造だけでなく、実際の成果からも確認できます。以下の3事例で百貨店イベントが顧客獲得に効果がある構造を紹介します。
事例①体験を通じて「日常の使用イメージ」を具体化し、その場で新規契約
▼家庭用ビールサーバーの事例

目的
キリンビール株式会社では、家庭用ビールサーバーを展開するに当たり、想定している利用者像と、実際に関心を示す層との一致を検証し、会員獲得を加速させたいと考えていました。同社の商品はテレビCMを通じて認知を獲得していたものの、家庭内での利用イメージが十分に伝わらず、購入検討時間を要していることが課題となっていました。
課題
認知はあるものの、
- 実際に味わったことがない
- 設置イメージが湧かない
- 導入後の生活が想像しにくい
といった理由から、入会検討が止まるケースが見られていました。
そのため、五感体験を通じて「自宅で楽しむ具体像」を描ける接点が求められていました。
施策
イベント内容
会場ではアンケートを実施しました。設問内容は百貨店が把握している来場者プロフィールを踏まえ、来場者に違和感を与えにくい構成としました。また、接客スタッフとの対話により、実践的な使い方のレクチャーや解約方法など疑問や負を解消しました。
会場選定
ターゲットである男性・家族層が数多く訪れるメンズファッションイベントを選定。ご家庭でご利用いただく商品特性を生かせる場所にしました。
空間設計
催事場の出入り口付近で来場者導線上で視認性の高いエリアを百貨店担当者と調整の上、確保しました。空間演出では会場コンセプトとの調和を重視し、伊勢丹メンズ館を象徴するブラックウォッチ柄を装飾に取り入れ会場内になじむブースデザインにしました。
集客
集客には伊勢丹メンズ館の公式メディアによる紹介記事の掲載に加え、公式SNSでの発信も行い、合計約15万人のフォロワーへの訴求を行いました。
効果
2日間のイベントでは、300枚超のアンケート回収に加え、「資料送付希望」や具体的な導入相談の申し込みを獲得しました。また、試飲体験とスタッフとの対話を通じて利用イメージが具体化したことで、導入意向を示す来場者が一定数確認できました。
単なる認知拡大ではなく、体験を通じて検討を前進させる顧客獲得施策として機能した事例となりました。
この事例のポイント
- 五感を使った体験は、検討を具体的に進めやすい
- 百貨店は「試して考える」行為が自然に受け入れられる
- 判断が整えば、強い訴求を行わなくても契約につながる
事例②将来不安の整理を通じて、見学予約・個別相談につなげた事例
▼富裕層向けシニアレジデンス プロモーションの事例

目的
富裕層向け介護付き有料老人ホーム「サクラビア成城」では、検討期間が長い商材特性の中で、施設見学や個別相談につながる新たな接点を拡大することが目的でした。
従来は紹介やダイレクトメールを中心に集客を行っていましたが、検討初期層との出会いをどのように増やすかが課題となっていました。
課題
入居金が高額で「終の住処」となる性質上、来場者は慎重に判断します。
しかし、
- 資料請求だけでは検討が進みにくい
- いきなり施設見学に行く心理的ハードルが高い
- 将来不安を言語化できず、判断が先延ばしになる
といった状況があり、顧客が見学前の“安心して話せる場”が不足していました。
施策
イベント内容
当日は、 施設の概要を伝えるブースを設け、来場者が気軽に相談できる導線を整えました。 また、外商顧客向けの案内媒体にイベント情報を掲載し、開催前から周知を図っています。
ブース周辺には、個室での説明が可能な環境も用意され、プライバシーに配慮した形での施設紹介が行われました。
会場選定
ターゲットである富裕層・シニア層と親和性の高い日本橋三越本店に出店しました。外商顧客の来店が集中する時期に会期を設定し、効率的にターゲット層と接触できる工夫をしています。
効果
本イベントでは、想定していた顧客像に近い層へ、施設案内パンフレットを配布でき、見込み顧客情報および施設見学の予約を獲得できました。特に、将来の住まいについて具体的に検討する可能性のある富裕層・シニア層との接点が多く得られています。
ブース対応に加え、外商顧客への案内や担当者による紹介などを通じて、落ち着いた環境で施設説明を行う機会が確保されました。その結果、施設の特徴や考え方を丁寧に伝える接点が生まれています。
また、本施策をきっかけに、 百貨店の顧客基盤を活用した今後の取り組みについて、検討の幅が広がりました。 富裕層向け媒体での情報発信や、会員向け施策など、次の接点創出につながる可能性が見えてきた点も成果の一つです。
本事例は、 百貨店イベントスペースを活用が、その場での成約を目的とするだけではないことを示しています。検討初期層との関係構築や、将来の施設見学につながる前段階の接点を創出する場として有効であることを証明しました。
この事例のポイント
- 対話の場は、将来への不安や疑問を言語化しやすい
- 百貨店は「まだ決めない人」も受け入れられる環境がある
- その場で結論を求めなくても、次の検討行動につながる
事例③広告表現に制約のあるサービスで、対話を通じて不安を解消し施設送客を実現
▼ドクターズコスメ プロモーションの事例

目的
株式会社office Cでは、ドクターズコスメの販売およびクリニックへの送客を強化することが目的でした。ドクターズコスメ市場は参入障壁が比較的低く、競合他社が多い環境にあることから、差別化やブランディングの難しさが課題となっていました。
また同社では、掛け捨て型の広告に依存するのではなく、「他のクリニックが行っていない取り組み」に挑戦することで、新たな接点をつくりたいと考えていました。
課題
ドクターズコスメ市場は競合が多く、差別化が難しい環境です。
加えて、
- 薬機法による表現制限
- オンライン接点だけでは伝わらない安心感
- 初回来院への心理的ハードル
といった要因により、認知から来院・契約までの距離が生じていました。“説明できない価値”をどう伝えるかが課題でした。
施策
イベント内容
感度の高いターゲットと直接接点を持てる銀座三越で実施しました。接客体験を重視し、専門スタッフが個別カウンセリングを行い、簡易肌チェックやテスター提供で使用感を確かめられる導線を設計。対話を通じて利用シーンや効果イメージを具体化し、商品購買だけでなく、後日のクリニック来院や継続的な関係構築につなげました。また、見どころをストーリーズで随時発信し、滞在中の回遊と参加意欲を高めました。
空間設計
競合との差別化とブランドイメージ向上を目的に、コストを投下したブース設計を実施しました。視覚的インパクトを高め、百貨店特有の空間で際立つ売場づくりを図りました。
効果
イベントでは、百貨店という場が持つブランド力を活かし、来場者から好意的な反応が得られました。既存顧客が、「通っているクリニックが三越伊勢丹でイベントを行った」という事実を前向きに受け止めた点も確認されています。
送客を目的とした導線設計により、クリニックへの来院につながる接点が生まれました。また、百貨店でのイベント実施実績が、採用活動においても好意的に受け取られる副次的な効果も見られています。
売上目標は設定していなかったものの、結果として前年対比200%を達成し、イベントにかかったコストも回収しました。
さらに、百貨店でのポップアップイベントの様子は、写真やSNS投稿として残り、今後のプロモーションに活用できる実績資産となっています。
この事例のポイント
- 制約のあるサービスほど、対話できる場が価値を持つ
- 百貨店は、挑戦的な取り組みに対して信頼性を補完してくれる
- イベントの成果は、売上以外の領域にも波及する
百貨店イベントスペースは「次につながるリアル施策」になり得る
百貨店イベントスペースは、単発の集客施策としてだけでなく、その後の検討や関係構築につながる起点として機能します。
今回紹介した3つの事例に共通しているのは、百貨店イベントスペースが「その場で売るための施策」ではなく、検討を前に進めるための接点として機能している点です。
百貨店プロモーションは顧客の背中を押す施策
百貨店でのプロモーションは、 一方的に訴求するのではなく、体験や対話を通じて判断材料を補う役割を担うものです。来場者は説明を受けながら、自分の生活や価値観に照らして考えられます。 その結果、無理な訴求を行わなくても、次の行動を自ら選びやすくなります。
体験と対話の設計が成果の質を左右する
成果につながっている事例では、体験と対話が自然につながる設計が行われていました。「触れる、話す、考える」という流れがあることで、 検討が具体化しやすくなります。単なる展示にとどめず、 来場者が関与できる設計が、その後の行動につながりました。
百貨店イベントスペースは、当日の成果だけでなく、次の顧客獲得につながる流れをつくるための施策といえます。
「体験型マーケティングで成果を生む― 広告の次に効く「売らない「体験」」の集客設計」
まとめ
この記事では、「百貨店イベントスペースは本当に顧客獲得につながるのか?」と感じているマーケティング担当者の方に向けて、百貨店イベントを活用した体験型プロモーションの効果を、具体的な事例を基に解説しました。
本記事で紹介したポイントは、以下のとおりです。
- 百貨店イベントスペースが顧客獲得につながりやすい理由
- 体験と対話を通じて検討が進んだ3つのプロモーション事例
- 百貨店プロモーションが「顧客の背中を押す接点」として機能する考え方
百貨店イベントスペースを活用したプロモーションは、その場での成約を目的とする施策ではありません。体験や対話を通じて検討を前に進め、次の行動につながる関係性を築くことで、結果として顧客獲得に結びついていく施策です。
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