開催前の背景と課題 |
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開催の決め手 |
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開催のプロセス |
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得られた効果 |
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724年に創建され、陸奥国府が置かれるなど、古代東北の中心として繫栄した「多賀城」は、2024年に創建から1300年を迎えました。この節目を祝うだけでなく、歴史的価値をもっと多くの人に知ってもらいたい、そんな思いから、2021年から本格的なプロモーションを始めました。
創建1300年に向けて、文化・芸術・音楽を中心にさまざまなイベントを企画しました。たとえば、多賀城駅北ビルA棟1階特設会場などでのアート展示やコンサート、文化センターでの音楽・芸術イベント、市民の皆さんが参加できる舞台劇、さらには記念式典などを実施です。
これらの音楽や美術などの文化・芸術というフィルターをとおし、地元の方々に改めて多賀城の歴史や文化の魅力を感じてもらう機会になったと考えています。
2021年~2022年 |
地元住民に向けた「インナープロモション」を実施
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2023年 |
全国に向けたプロモーションを計画、業者を選定 物販だけでなく、イベント展示が行える「イベマチ」に依頼 |
2024年2月 |
「全国向けのプロモーション」を本格的に実施
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2021〜2022年での、まず地元住民の方に向けたインナープロモーションとして、多賀城の歴史的価値を再認識してもらうことに重点を置いていましたが、「もっと多くの人に多賀城の歴史を伝えたい」と考え、全国に向けた発信にも力を入れることになりました。
2024年2月には、多賀城ゆかりの芸能人を迎えて東京都内で記者発表を実施しました。さらに、この機会を最大限に活かし、発信力を高めるために、記者発表と同時に都心の百貨店での展示プロモーションを行うことを決めました。
しかし、これまでは物産展を通じた販売経験はあったものの、歴史や文化を前面に押し出したプロモーションの経験はなく、そこが大きな課題でした。
創建1300年記念事業では「多賀城の歴史や文化を伝える」ことを目的としていたため、これまでとは違う形のプロモーションが求められていました。「特産品を売る」のではなく、多賀城の魅力を視覚的に「魅せる」展示にすることは大きな挑戦でした。
百貨店での展示プロモーションの経験がなく、企画の立案や実施方法の検討には多くの課題がありました。どのように展示を設計し、多賀城の価値を効果的に伝えるかを模索するなかで、「イベマチ」から百貨店でのイベント実施のご提案をいただきました。
「イベマチ」担当者と話を進めるなかで、「これなら特産品を売るだけにならない展示が実現できるかもしれない」と感じました。しかも会場は銀座三越。銀座は、日本有数の商業エリアとして国内外から多くの方が訪れ、そのブランド力は圧倒的です。なかでも銀座三越は、感度の高い消費者が集まる百貨店として広く知られていると感じており、「銀座」という地名そのものが持つ影響力を活かすことで、多賀城の存在を知らない層にもアプローチできるのではないかという期待もありました。
そして、銀座三越を訪れるお客さまに対し、単なる特産品の販売ではなく、多賀城の歴史や文化を含めた価値を伝えることで、より深い認知と興味を持っていただけるのではないかと考えました。
イベント準備のなかで最も重視したのは、「多賀城1300年の歴史をどのように来場者に伝え、価値として実感してもらうか」です。単なる歴史紹介ではなく、地域の自然や文化、先人たちが築いてきた土地への愛着や努力があるからこそ現在がある。そんなストーリーや想いを形にするために、多角的に表現すること追求しました。
また、銀座三越という格式ある会場にブース装飾にするため、視認性やブランドイメージを意識した展示設計も重視しました。「イベマチ」担当者のアドバイスを取り入れながら、来場者の目に留まりやすいブース設計を目指しました。シンプルでありながら洗練されたデザインを追求し、伝えたい価値がより明確に伝わるよう、何度も議論を重ねた結果、コンセプトの精度は想定以上に高まったと感じています。
物販では、多賀城市の特産品である「古代米」を中心に、日本酒や古代米リゾットなどを販売しました。多賀城市観光協会の協力を得ながら、商品や業者の選定を進めました。
一方で、私たちは百貨店でのイベント経験が少ないため、接客に関するオペレーションや理解の向上が課題でした。そこで、スタッフへの事前インプットを徹底し、販売に関する説明や役割分担を明確化することで、スムーズな運営体制を整備しました。また、スタッフ間でのコミュニケーションを強化し、連携を深めることで、安心して現場で接客ができました。
イベント準備中の「イベマチ」のサポートは心強かったです。多くの準備を宮城県で行っているため、頻繁な現地確認が難しい状況でした。そのため、「イベマチ」の担当の方が、これまでの開催事例の共有や、実際の売り場を意識した陳列方法、視覚的に訴求力のある展示手法について具体的な提案してくださり、より効果的なプロモーションを実現できたと感じています。
今回のイベントでは、銀座三越という格式ある会場にふさわしい視覚的な統一感を演出するため、スタッフ用に新たに青い羽織ものを制作しました。従来のイベントで使用される法被とは違い、上品な印象を与えつつ、イベント運営のしやすさも考慮したデザインに仕上げています。
羽織ものには、多賀城の頭文字「T」のデザインや「724年」の数字を取り入れ、歴史的背景を強調しました。また、会場内の朱色・白・黒を基調とした空間でも映えるよう、スタッフ全員の意見を取り入れて、高級感のあるブルーを採用。
さらに、接客面でも銀座三越のブランド力にふさわしい水準を保つことを意識しました。そのために、事前準備を徹底し、多賀城の
ブランド価値を洗練された形で伝えられるようスタッフ全員で心掛けました。ありがたいことにお客様からからも大変好評でした。
銀座三越という格式ある会場にふさわしいディスプレイにこだわった結果、多くの方に足を運んでいただき、興味を持っていただくことができました。準備したパンフレットも予想以上に手に取っていただけて、PR効果は十分に発揮されたと感じています。
また、銀座三越というブランドが持つ信頼性や集客力も大きな後押しになりました。特に、品質やストーリー性に関心のある来場者が多く、多賀城の1300年にわたる歴史や特産品の背景について、深くお伝えすることができました。
さらに驚いたのは、7階という立地にもかかわらず、積極的な呼び込みを行わなくても多くの方にお越しいただけたことです。銀座三越のブランド力の高さを実感する要因のひとつでした。また、都内にお住まいで宮城県や多賀城市にゆかりのあるお客様からも「地元のイベントを見かけて嬉しかった」と声をかけていただきました。
銀座三越という全国的な発信力を持つ場で開催できたことで、多賀城の認知度向上やブランド価値の強化にもつながったと感じています。
今回のイベントでは、想定していなかった海外からの来場者にも多賀城市の特産品を知ってもらう機会となりました。特に、古代米を使用した日本酒は、甘めの味わいが特徴で、日本酒愛好家にはやや甘すぎると感じられることが多いのですが、外国人の来場者には「ライスワイン」として親しみやすいということがわかったのです。試飲を通じて興味を持った方がそのまま購入するケースも多く見られました。
こうしたリアルな反応から、新たな市場の可能性やプロモーションの方向性について、多くのヒントを得ることができました。商品に付加価値を与えるストーリーの伝え方や、ターゲット層に応じた表現の工夫が、今後のプロモーション戦略において重要になると実感しています。
今回の銀座三越でのプロモーションを通じて、多賀城の歴史的な価値や文化の奥深さを、さまざまな方に伝えることができたと実感しています。特産品の販売にとどまらず、歴史を背景としたストーリーを
丁寧に伝えることで、多賀城市の“顔”や“想い”を届ける場にもなりました。
今後も多賀城市では情報発信を継続し、東北随一の文化交流都市を目指していきます。
今回のプロモーションでは、創建1300年をテーマに展開しましたが、今後は特別史跡「多賀城跡附寺跡」と国宝「多賀城碑」という2つの歴史的遺産に焦点を当て、さらなる情報発信を行っていく予定です。
多賀城跡は、かつて東北の政治・文化の中心地として機能した歴史的拠点であり、広大な遺跡からは当時の都市構造や人々の交流の歴史をうかがい知ることができます。一方、多賀城碑は、762年に建立され、多賀城の創建年(724年)と天平宝字6年(762年)の改修について今に伝える唯一の史料です。令和6年8月には市重要文化財から国宝へと昇格しました。東北の歴史を証明する貴重な史料として欠かせない存在です。これらの歴史的価値を活かし、より多くの人に多賀城の魅力を知ってもらうことを目指しています。
歴史と現代が融合するまちづくりを推進し、多賀城の持つ価値をより広く伝えていくことが重要です。訪れた方々にその魅力を感じてもらい、近隣の観光施設も含め、多賀城に足を運んでもらえるよう今後も取り組みを続けてまいります。
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